グリーン電力証書の会計処理はどうするの?わかりやすく解説!
1、グリーン電力証書とは
再生可能エネルギーによって発電された電気は「電気そのものの物理的価値」と同量の環境に貢献している価値「環境価値」が存在しています。この「環境価値」を取引可能な証書にしたものがグリーン電力証書です。
再生可能エネルギーの助成制度として資源エネルギー庁が定めた「グリーン電力証書ガイドライン(2008年6月制定)」によって運用が開始されています。
エナーバンク社でもグリーン電力証書を発行し一般企業様に販売することで脱炭素へ積極的に取り組む企業様を後押ししております。
(例)グリーン電力証書発行システム「グリーンチケット」でESRと連携
・グリーン電力証書とは
グリーン電力証書を購入しようとする組織購入者の用途に応じた円滑な証書の購入を促進することを目的としたガイドラインが「グリーン電力証書ガイドライン」です。
このガイドラインは、一般財団法人日本エネルギー経済研究所・グリーンエネルギー認証センターが認定する自然エネルギー発電設備を保有する証書発行事業者および証書化されたグリーン電力証書を対象範囲としています。
ここで認証対象となるグリーン電力は、太陽光、風力、バイオマス、水力、地熱の5つの発電による電力です。
・グリーンエネルギー認証センターとは
グリーン電力に対する社会的認知度の向上やグリーン電力価値の取引における信頼度の向上を目指し、グリーン電力価値の認証を行う機関で、JQAと呼ばれています。。発電事業者や認証発行事業者、グリーン電力価値購入者とは独立した形で設立されています。
2、企業会計基準における排出量取引の会計処理
排出クレジットとは、京都議定書における国際的な約束を履行するために用いられる数値であり、国別登録簿においてのみ存在しており、所有権の対象となる有体物ではなく、法定された無体財産権ではないのが特徴です。その上で、取得や売却した場合は有償で取引されるので、財産価値を有しています。
つまり排出クレジットは法定された無体財産権ではありませんが、無形の財産価値があると言えます。よって会計上は、無形固定資産に近い性格です。
企業会計基準第 10 号「金融商品に関する会計基準」第 4 項において例示された資産の形態と類似性がなく、排出クレジットを保有する者は現金を受け取る契約上の権利がない為、金融資産には基本的に該当しません。
・他者から購入した排出クレジットの会計処理をどうするか
「第三者に販売する目的」で排出クレジットを他者から購入する場合、通常の商品等の購入と同じ会計処理をします。
契約締結段階では取引を認識せず、引き渡しを受けた時点で取引を認識します。引き渡しを受けた排出クレジットは、取得原価により棚卸資産として処理して、期末における正味売却価額が取得原価より下落していれば、当該正味売却価額をもって賃借対照表価格とします。
排出クレジットの取得の前に資金を支出していれば原則として前渡金とします。取得までの期間が長期になりがちなので、評価減の要否検討が必要とされます。
「将来の自社使用する目的」の場合は、無形固定資産、または、投資その他の資産の購入として会計処理をします。
取得した排出クレジットは時間経過による減価がなく、陳腐化もない為、減価償却は行われません。ただし、固定資産の減損に係る会計基準の対象となります。適用の際に、第三者への売却可能性に基づく財産的価値を有していることに着目して資産計上される為、他の資産とのグルーピングは適当ではありません。
資産として計上された排出クレジットは、自社の排出量削減に充てられたときに、これを費用として計上します。具体的には、排出クレジットを国別登録簿の政府保有口座へ償却を目的として移転した時点で費用とします。
3、東京都の排出量取引制度のガイドライン
東京都は、基本的に企業会計基準委員会が公表した「排出量取引の会計処理に関する当面の取扱い」実務対応報告第 15 号に準じた処理をすることで問題ないとしています。
・削減計画期間中における超過削減量の取得時はどうするか
会計処理は行いません。
・超過削減量の売却時はどうするか
超過削減量の売却の対価は仮受金その他の未決算勘定として計上し、当該削減計画機関における削減達成が確実と見込まれた時点で利益に振り替えます。
・クレジット時の購入時はどうするか
目的によって変化します。削減義務の履行に使用する目的の場合は無形固定資産、または投資その他の資産の処理です。第三者販売目的の場合は棚卸資産の取得として処理します。
・引当金の計上はどうするか
削減義務の未達が見込まれる場合は、一般的な会計基準に従って引当金を計上します。
・クレジット等の指定管理口座への移転時はどうするか
有償取得して資産計上したクレジット等は指定管理口座へ移転すると売却できなくなるので、移転した時点で費用とします。
・偶発債務の注記はどうするか
重要性がある場合は必要です。
4、オフセットとCSR活動等による販売管理費としての取り扱い
東京都のガイドラインでは、グリーン電力証書によるオフセットはCSR活動とされ、販売管理費処理に計上されます。税務上は寄付金の扱いです。
この為、販売費及び一般管理費として、商品の製造・販売にかかった費用のうち、「販売活動に必要な費用や企業全体の管理活動にかかる費用」と「企業の一般管理業務にかかわる費用」として取り扱います。
・グリーン電力証書によるオフセットとは
グリーン電力の発電量を当該グリーン電力の発電により削減、または回避された温室効果ガス排出量に換算して相当量のグリーン電力証書を購入などをすることです。
(参考記事)【5つの手順】グリーン電力証書の購入方法!選び方や3つのメリットを解説
5、まとめ
今後状況に合わせて変動もあるかもしれませんが、現状としては企業会計基準委員会のガイドラインに沿うことになります。
注意すべきは、購入時の目的によって取り扱いが変化するところです。また、基本的には無形固定資産でありながら、金融商品としての処理が求められるケースもあるのは気にしておくべきしょう。